*メールマガジン「小白川通信 36」 2016年1月11日

 世の中の「常識」の中には、当てにならない常識もあります。文部省唱歌の『雪』で「犬は喜び庭かけ回り 猫は炬燵(こたつ)で丸くなる」と歌われていることもあってか、「猫は寒がり、犬は雪が大好き」のように思われています。かく言う私も、漫然と「そんなもんだろう」と思っていました。ところが、現実はまるで異なるようです。

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子猫のマロ(生後5カ月)

 山形の山村にある実家では、母親がずっと一人暮らしをしていました。私は7年前に山形に戻り、団地から通って母親の世話をしてきたのですが、去年、90歳で他界したため、空き家になった実家に引っ越して暮らし始めました。実家には以前から、お腹をすかした野良猫が食べ物を求めて出入りしていたのですが、引っ越しを機に、日当たりのいい小部屋を「猫部屋」に改装して「出入り自由」にしてみました。食べ物も与えています。

 たっぷりと栄養を摂れるようになったからか、メス猫とその娘が去年、それぞれ2匹と3匹の子を出産しました。5匹の子猫にとっては、この冬が初めての冬。雪の朝、どうするか観察していたら、興味津々、雪の降り積もった庭をかけ回っています。同じ時期に生まれた子猫でも、庭に出ることなく、室内でうずくまっている猫もいます。臆病で神経質な性格の猫です。要は、好奇心が強く行動的な猫は、初めて目にするものが大好きで、転げ回らないではいられない、ということのようです。

 疑い深く、「信じられない」とお思いの方のために、庭をかけ回る子猫の動画をユーチューブにアップしました。シベリアの雪原を行く虎のような(大げさですが)身のこなしも見せています。カラー文字のところをクリックしてご確認ください。

雪の朝。猫も喜び庭かけ回る

 庭を走り回っている三毛猫とシャムネコ風の猫は、どちらも去年8月の生まれ、生後5カ月。画面をチラリと横切る黒白まだらの猫は5月生まれで生後8カ月。いずれも生粋の野良猫です。世間には「夏猫は飼うな」という言い伝えがあるとか。寒さに弱いからのようですが、わが家に出入りしている子猫たちは、そんな言い伝えも吹き飛ばす元気さです。時折、どこかに出張って行っては子ネズミを捕まえて持ち帰り、ムシャムシャと食べています。この3匹を含め5匹の子猫のうち4匹がメス猫なので、「これ以上増えたらどうしよう。避妊手術を施すしかないか」というのが目下の悩みです。

 同じ野良猫でも、親猫は雪の庭をかけ回ったりはしません。厳しい冬を乗り切るために為すべきことを黙々と為す、という風情です。人間も猫も、無邪気に転げ回っていられるのは子どもの時だけ、ということでしょうか。

 ネットで調べてみると、「寒がりでなかなか外に出ようとしない犬」も珍しくないようです。「うちの犬は雪が降っても外に出ようとしません。大丈夫でしょうか」と悩み事相談のような投稿もありました。「人生いろいろ」と言いますが、猫もいろいろ、犬もいろいろ。どんな生き物にもそれぞれに個性があり、一概には言えないということでしょう。作詞、作曲とも不詳の童謡『雪』はとても味わい深い歌ですが、猫と犬にとっては「異議ありの歌」と言えそうです。
(長岡 昇)

≪注≫
三毛猫は「八重(やえ)」、シャムネコ風の猫は「マロ」、黒白まだらの猫は「オペラ」という名前で呼んでいます。命名の理由は省略。

≪参考サイト≫
「snow cat play」で検索したら、雪と戯れる猫の動画がたくさんありました。カラー文字のところをクリックしてみてください。
Elaine burrows in snow (イレインの雪掘り)
Cute Cats playing in the snow (雪と戯れるかわいい猫ちゃん)
Funny Cats Playing in the Snow First Time Compilation 2015 (雪と戯れる愉快な猫たち<2015年初編纂>)

≪写真≫
撮影・長岡遼子、2016年1月4日