*メールマガジン「おおや通信 102」 2013年3月7日


 月に2回発行している大谷小学校の学校便り「大谷っ子」に、4年の男の子が書いた作文「お父さんの出発の日」が掲載されました。

 会社勤めをしている父親がアメリカに新しくできる工場で働くために2カ月ほど出張することになり、お母さんと一緒に山形駅まで行って父親を見送った、という内容です。男の子は「見送る時は少しさびしかったです」と結んでいました。大谷小学校のような農村にある学校でも、家族が仕事や旅行で海外に行くことは、今では珍しいことではなくなりました。世界はますます狭く、身近なものになってきました。

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大谷小では毎年3月にバイキング給食があります。好きなものをお腹いっぱい食べることができます


 思えば、この男の子は4年前、私が校長として赴任して間もないころ、「世界はずいぶん狭くなったなぁ」と実感させてくれた生徒の一人でした。全校朝会で講話をすることになり、私は「今日は恐竜より古い時代から生きている魚の話をします」と切り出しました。すると、当時1年生だったこの生徒は手を挙げて「分かった。シーラカンスだ!」と叫んだのです。
 
 いきなり正解を言われて、私は内心、驚いたのですが、そんな素振りは見せず、淡々と「生きた化石」と言われるこの魚をめぐる話を語って聞かせました。何億年も前の地層から化石で見つかり、とっくの昔に絶滅したと考えられていたこの魚が70年ほど前にアフリカ沖で偶然、発見されたこと。そして、1997年に今度はインドネシアの海でも見つかった、と写真も使いながら紹介しました。

 講話が終わってから、私はこの生徒にそっと「どうしてすぐに分かったの」と尋ねました。答えは「お父さんにアクアマリンふくしま(水族館)に連れて行ってもらって、見てきたばっかりなんだ」というものでした。高速道路網が整備されて、今では山形県の朝日町から福島県のいわき市まで、日帰りでドライブできるようになったのです。

 この次の年には、アイスランドの噴火を言い当てられました。この時も、体育館に集まった生徒に向かって「今日はヨーロッパの人たちが困っている話をします」と言っただけなのに、またもや「分かった」という言葉が返ってきたのです。この時も1年生でした。大きな噴火でしたので、テレビのニュースでも報じられていましたが、「ヨーロッパの人たちが困っている」という切り出しで、すぐに「噴火」という言葉が出てくるとは思ってもいませんでした。そこで訳を尋ねると――。

 「じいちゃんがヨーロッパ旅行に行ってたんだけど、飛行機が飛べなくなって帰るのが遅くなったんだ。帰ってきてから聞いたら『おっきい噴火があったんだよ』って言ってた」

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卒業まであとわずか。5年生を中心にして在校生が「6年生を送る会」を開きました


 子どもたちが大人になる頃には、世界はさらに狭くなっていることだろう。その世界が身近なだけでなく、豊かで暮らしやすいものになるように、一人の大人として力を尽くしたい。

 *大谷小学校の学校文集「おおや」43号への寄稿に加筆