*メールマガジン「おおや通信 84」2012年6月15日


 会議や研修会で校長が大勢集まると、休憩時間によく給食の話になる。息抜きの時間なので、本音がストレートに出てくる。「給食が飛び抜けておいしい」と評判なのは高畠町である。有機農業の里として全国に知られているだけあって、そもそも食材がいいのだろう。調理師さんたちも頑張っているからに違いない。

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大谷小学校では学年ごとに学校の畑で野菜を栽培しています。1年生が作っているのは
ピーマン、サツマイモ、トウモロコシ、トマトの4種類。一部は給食の食材にします


 その対極にあるのが山形市だ。「給食の時間がつらい」とこぼす校長が多い。私も何度か食べたが、お世辞にも「おいしい」とは言えない。ついこの間も、山形市から別のところに異動になった校長が「ホッとした」と話していた。
 評判が悪くて当然である。山形市は大規模な給食センターで2万食以上をまとめて作り、51の小中学校に配送している。調理師さんがどんなに腕を振るっても、炊き立てのご飯を提供する自校給食にかなうはずがない。

 どこの市町村も財政は火の車だ。人件費の削減を迫られ、給食を民営化する動きが広がっている。給食センターで一括して作れば、経費が浮くのは確かだろう。
 しかし、食は学力、体力すべての基盤である。そこに金と力を注ぎ込むことを惜しんで「子どもは地域の宝です」などと言っても、誰も信用しないだろう。

 「民営化しても、おいしい給食を出すことはできる」と言う人もいる。理屈はそうだが、現実はそんなに甘くはない。企業はもうけを出さなければ立ち行かない。それは逃れられない定めであり、給食の質に必ず跳ね返ってくる。
 自校給食を民営化すれば、調理師さんは職員会議に出て来なくなる。子どもと接する大人たちが一体となって教育にあたるチームワークが崩れる。これはコスト論では推し量れない大きな損失である。

 目に見えないもの。数字では表せないもの。それをたぐり寄せる英知こそ、今、求められているのではないか。

  *6月15日付の朝日新聞山形県版のコラム「学びの庭から」(3)
  *改行個所や写真の説明は一部、新聞のコラムとは異なります。