*メールマガジン「おおや通信 82」 2012年5月18日


 校長として小学生に話をするのは、中高生や大人を相手にするのとは違った難しさがある。

 1年生はひらがなを習い始めたばかりである。話の中に知らない言葉が出てくると、途端に頭がぐらつき出し、「なに言ってんのか分かんない」という顔になる。かといって、かみ砕きすぎると、6年生がそっぽを向く。こちらは大人の世界への入り口にいる。両方によく分かり、なおかつ心に残る話をするのは容易なことではない。

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大谷小学校の近くにある秋葉山に、みんなで春を探しに行きました

 去年は大震災の話をした。津波はどうして起きるのか。被災地はどんな状況にあるのか。ボランティアに行って泥かきをした体験を交えながら、できるだけ分かりやすい言葉で語りかけた。

 原発の仕組みと事故の話もした。この時は、子どもたちの知らない言葉も使わざるを得なかった。かつて、北海道の泊原発を取材したことがある。その際に入手した燃料棒のサンプルを示しながら、こう述べた。
 「この棒はジルコニウムという金属でできています。硬いけれども、1800度くらいで溶けてしまいます。そうなったら大変なことになります」

 難しい話だったに違いない。けれども、どの子も食い入るようにして聞いていた。何か、とてつもないことが起きていることを察知していたからだろう。子どもたちは、未熟ではあっても愚かではない。「これは大事だ」と感じたら、一生懸命に理解しようとする。子どもだましの話でお茶を濁してはいけない。

 今年は毎月、命について話をしたいと考えている。4月のテーマは「いのちと地球」。地球が誕生したのは46億年前とされる。人間が登場したのはついこの間、子どもに大人気の恐竜ですら、生き物としては新参者である。

 恐竜より古い時代に生きていた不思議な動物たちのイラストを見せたら、何人かが「オオッ」と身を乗り出してきた。
 
 *2012年5月18日付の朝日新聞山形県版のコラム「学びの庭から 朝日町発」(2)