*メールマガジン「おおや通信 81」 2012年4月13日



 山形県の朝日町では、学校のグラウンドの雪がようやく消えて地面が見え始めました。
年配の方に聞いても、これほどの大雪は生まれて初めてとのことでした。
 4月から月に1回(第2金曜日)、朝日新聞の山形県版に小さなコラムを書くことに
なりました。暗?い記事ばかり書いてきた元アジア担当記者としては、つとめて明るい
タッチのコラムにしたいと念じています。とっても難しいです。

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 コラム「学びの庭から 朝日町発」 子どもの目 光る時にこそ

 子どもがじっとこちらを見ていたら、気をつけた方がいい。ある時、給食で同じテーブルにいた子どもの目の隅がキラリと光った。
校長「どうした?」
生徒「先生、鼻毛が白いよ」

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この春、大谷小には11人の1年生が入学しました。玄関前には、除雪した雪がまだたくさん残っています。


 子どもは気配りということをまだ知らない。見たこと、面白いと思ったことをズバリと言う。この子は、白髪がある大人は鼻毛も白いことをこの時、初めて「発見」したのだろう。「よく見つけたねぇ。ニャロメ!」。ここは、怒りつつ褒めるしかあるまい。

 新聞記者から小学校の校長に転じて3年になる。ある人が「子どもの目には、この世の
中はとても明るく見えているのです」と言っていた。その通りだと思う。小学生にとっては、毎日が発見の連続である。自分の小さな世界がどんどん広がっていく。私たちが想像する以上に、世の中が明るく見えているに違いない。

 大震災とそれに続く福島の原発事故で、この国はとても「明るい状態」とは言えない。彼らが生まれる前から、経済は右肩下がり。国の借金も、ものすごい額だ。けれども、長い歴史の中に身を置いてみれば、実はそれほど暗くなる必要もない。

 明治までさかのぼるまでもなく、昭和ですら冷害で飢餓にあえぎ、娘の身売りが横行した時代があった。父祖の時代、若者は戦場に送られ、次々に死んでいった。われわれの世代で言えば、学びたくても学ぶ機会をつかめない人がたくさんいた。
それらをすべて乗り越えて、今がある。厚い蓄積の上に現在の暮らしがある。問われて
いるのは、その蓄積を次の世代にどのように伝え、どう活かしていくかだろう。

 子どもの目がキラリと光った時にこそ伝えたい。この国の豊かな蓄積を、おおらかな気持ちで。

 *このホームページに掲載した写真は、朝日新聞山形版に掲載されたコラムの写真とは異なります。